STUDY研究活動・社会貢献
古都・水郷都市蘇州
長埜 洋介 (YOUSUKE NAGANO)
はじめての中国本土
今回の上海・蘇州の旅で初めて中国本土に足を踏み入れることになった。
中華人民共和国の行政区分は、23省・5自治区・4直轄市・2特別行政区に分けられている。上海は直轄市となっており、直轄市は上海以外に北京市、重慶市、天津市の4市であり、中国でも最高位の都市であり、省と同格の一級行政区画である。
また、特別行政区でイギリスから返還(1997年)された香港と、ポルトガルから返還(1999年)されたマカオは、中国の地方行政制度とは異なる行政機関が設置され、独自の法律が適用されるなど、大幅な自治権を持つ地域である。
▼清 (Chinese Empire)の地図(1910年) (中国本土 wikipediaより画像を借用)
▼中華人民共和国の行政区分と領土紛争 (中華人民共和国 wikipediaより画像を借用)
画像著作者:CC 表示-継承 3.0, https://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=253986
上海のまち
上海(東国際空港)までは、日本から3時間程で到着する近くて安全な観光都市である。外国人旅行者数(2019年1月・2月の累計)でみても11.6万人で日本人が最も多く、次いで韓国10.7万人、アメリカ8.9万人などとなっているほど日本人の多い観光地である。
研修では、1851年に開発が始まったという商業街で創業100年以上の老舗も多い上海を代表する観光ストリート「南京東路」や西洋建築群が建ち並ぶ「外灘(バンド)」、旧フランス租界の街並を再現した「新天地」、上海のランドマークである「東方明珠塔(上海テレビタワー)」やビルの高さ世界第2位の「上海タワー(上海中心)」、第3位「金茂大厦」などの高層ビルが建ち並ぶ上海の経済発展を象徴する「浦東新区」、400年以上の歴史がある明代の伝統庭園とそれに隣接する商業エリアがある「豫園商城」を訪れた。
▼上海タワー
▼豫園(よえん)
▼外難(西洋建築群)(ばんど)
蘇州のまち
蘇州は、運河が栄えた「東洋のベネチア」といわれ、長江流域の都市で最も古く約2500年の歴史*1を持っている。上海から高速鉄道(新幹線)で30分ほどの位置にあり、上海から日帰りで一日楽しめる位置にある。
研修では、8角9層の巨大な塔のある「北塔報恩寺」や中国系アメリカ人建築家のI.M.ペイの設計の「蘇州博物館」、中国四大名園の一つである「拙政園(せっせいえん)」、歴史的景観保全地区で、水郷の街である「山塘街(さんとうがい)」を訪れた。
*1 紀元前514年に呉の国王闔閭が蘇州を国の都に制定、これにより大規模な建造が始められた。当時の行政と貿易の中心地になり、京杭大運河の建設と開発が蘇州の発展を促した。七世紀の初頭に大運河が完成し、蘇州のその地位を一層高め、宋朝(960年 – 1279年)-元朝(1271年 – 1468年)に、蘇州繁栄を極めた。(出典:蘇州市公式観光サイトより引用)
▼蘇州博物館
▼山塘街(歴史的景観保全地区)(さんとうがい)
▼拙政園(せっせいえん)
古都・水郷都市蘇州
蘇州は、古くから絹織物で発展した国家歴史文化名城*2であり、環状の堀で囲まれた昔からの住宅が立ち並び、世界遺産の園林などが点在している。中国に現存する最も古い街であり、中国で最も河と橋が多い場所である。地図でみるとなおさら水郷都市を感じる。蘇州を中心に太湖、金鶏湖、澄湖などが回りにあり、静脈のように河川が張り巡らされているのがわかる。
現在の移動手段は、鉄道や車が中心となっているが、観光として水運が色濃く残っている。
▼拙政園の建物と池(2枚)
▼蘇州博物館の中庭
▼蘇州博物館の建物内の滝
▼山塘街の水運観光
▼山塘街の川沿いの座り空間
川に沿って街が形成されているため、敷地や建物内にも水が入り込んでいるところが多く、水辺での食事ができる店なども多い。
拙政園では、建物と池が一体として設計されている様子がよくわかる。蘇州博物館でも中庭や建物内にも水空間が造られている。
蘇州の観光地で有名な山塘街においても、山塘河に沿って商店街(山塘街)が形成され、昼夜問わずにぎわいをみせている。街並みも建物の様式や素材、装飾、サインが統一されており、街並みの連続性も魅力となっている。また、小舟による観光や川に沿った細い路地のすわり空間もまた山塘街の風景を作っている。
*2 中華人民共和国の文化遺産保護制度の一つ。中華人民共和国国務院が1982年に制定した制度である。歴史的価値や記念的価値が高く、現在も継続して使われている都市を保護する制度である。
▼蘇州 旅行者用の地図(1931年)(蘇州市 wikipediaより画像を借用)
さいごに
これまでの研修では、直線距離で台北2,100km、香港2,900km、シンガポール5,300km、上海1,720kmと行ったが、海外研修2泊3日を考えると西も東もアジア圏が限界である…もう少し足を延ばせして北欧ヘルシンキ7,800km、欧州トルコ8,900km。ぜひ行ってみたい。